「みどり・自然・すまい」(8)

 待ち遠しかった春。でも、私たちは桜の季節を2度もコロナ禍の中で迎えることになってしまいました。そして気が付いたら、例年より早い梅雨の季節に・・・。

 

 コロナで明け暮れたこの2年間でなんと3度目の緊急事態宣言が出るなど、どう見ても行き当たりばったりの政府のコロナ危機対策にも「怒り」を通り越して、この頃は「ストレスがたまるのでスルーしよう」と思うばかりです。そういう人って、結構、多いのでは…。

 ただ、考えようによっては、今回の「コロナ危機」のおかげで、この国の政治や執政官のレベルの低さ、この国の危機管理のまずさなどが、だれの目にもはっきりしたことは「よかった」と思っています。

 昔、アメリカの大学院の授業で、黒板にお世辞にも上手とは言えない2文字漢字「危機」を書きながら、「危機」という漢字は「危」と「機=チャンス」の2つの字から成り立っていると説明し、「コンフリクト(英Conflict=物事が立ち行かなくなる危機的状態)」には「チャンス」という意味もあると教えていたアメリカ人の先生がいました。

 私たち学生は、「危機」、つまり「コンフリクト」が起こることで、これまでの見方や考え方が変わり、その結果、社会や個人が変わる可能性も広がる、だから「コンフリクトは必ずしも悪くない」と学んだわけですが、それも、当事者それぞれの受け止め方次第、というわけです。

 そう思って考えるに、今私たちが直面しているコロナ「危機」で、これまでのさまざまな価値観からのパラダイムシフトがうまくいけば、コロナ後、2015年の国連で決まった国際社会共通の目標のSDGs(持続可能な17の開発目標)を達成する国々も出てくるでしょう。

 さて、コロナ後の日本はどうでしょうか。

 今、コロナの影響による減収で多くの自治体が公共事業の予算を減らしている一方、私の地元大田区では箱もの建設の公共事業の見直しをせず、減収で予算が足りない分、借金や区債を発行してお金を集めようとしていると、友人からラインで情報が届きました。

 「公共事業で右肩上がりの経済成長を!」と、いまだに昔の夢を見続けてパラダイムシフトができない人々が大勢いる、しかも、そういう人々が地方自治体だけでなく中央政府の行政機関にも大勢いるのだろうと、昨今のこの国の政治を見て思うわけです。

 

 そんな大田区の環境計画課から、私の所属するボランティア団体「多摩川とびはぜ倶楽部(tamagawa-tobihaze.amebaownd.com)に、先日、活動紹介のパネル展示をしてほしいと依頼があり、多摩川干潟の生き物たちの紹介と川での清掃活動の様子を紹介するパネル2枚を作成して区役所に搬入しました。当日、私たちをがっかりさせたのは、環境計画課の「環境コーナー」が区役所の建物の片隅に設置されており、「環境コーナー」に隣接するマイナンバー受付会場へ誘導する案内板は置いてあるも、区役所玄関の入り口のどこにも「環境コーナー」へ誘導する案内がないことでした。

 さらには、「環境コーナー」の前にも「マイナンバー受付」の案内版が置かれていて、私たちの展示パネルが見えなくなっているではありませんか。

 「あの案内板を少し動かせませんか」と環境計画課の担当者に打診すると、「それはマイナンバー受付の部署の管轄で、私どもの管轄ではないので、何もできない」とそっけない返事。いくら頼んでも埒が明かないので、私がマイナンバー受付に直接行って、「このままでは、せっかくの展示パネルが見えないので、この案内板を反対側に移動できませんか」とお願いしたところ、難なく問題解決ができ、マイナンバーの案内板を移動することができました。

 ちいさな案内版を右から左へ移動するという些細な事でしたが、ちょっとしたことでも面倒なことはやりたくないという人がいる、「環境コーナー」などを設置はするも、できるだけ多くの住民に環境問題を知ってもらいたいという志もなく、ともかく形だけ整えればそれで仕事は終わったと考えている人たちがいる。そして彼らが地方自治体や国の行政を支え・担当している限り、この国が諸外国に倣って掲げるSDGs(持続可能な開発目標)を目指すのは夢のまた夢。とても「難しいだろう」と思いました。

 

 私が今大事にしている言葉があります。それは"Think globaly, Act locally "(地球的視野で考え、ローカルに行動する)です。

 

 未来のまちづくりについて、東京都は先端技術も活用しながらゼロミッション東京を目指し「地球環境と調和を図り、持続的に発展していくこと」を理念とすると公表していますが、このような高邁な理念を「絵にかいた餅」で終わらせないためには、まず、自分たちの足元から見直し、志を持って行動し、組織や集団を支えることのできる人材の育成や登用から始めるべきでしょう。

 地方自治体はもちろんのこと、日本の政治や行政に携わるすべての人々が、今回のコロナ「危機」を機に、パラダイムシフトをしてくれることを期待しています。

 「公共事業で右肩上がりの経済成長を!」では、この国の未来はないと思っていますが、皆さんのお考えはいかに。